プロの水道修理業者として数多くの現場を見てきた経験から申し上げますと、トイレの詰まりの約三割は、実は適切な放置時間を設けるだけで解決できるケースです。多くの居住者が、水が流れないという異常事態に直面すると即座に電話をかけてこられますが、現場に到着するまでの三十分から一時間の間に、いつの間にか詰まりが解消してしまっていることも少なくありません。このような場合でも出張費が発生してしまうため、お客様にとっては非常にもったいない出費となります。では、どのようなケースで、どれくらいの時間待つのが正解なのでしょうか。まず判断基準となるのは、最後に流したものの内容です。トイレットペーパーや排泄物であれば、水に溶けやすく、時間の経過とともに構造が崩れます。この場合、最短でも一時間、できれば二時間から三時間は様子を見るべきです。水は非常に優れた溶媒であり、紙の繊維の間に入り込んで結合を断ち切ってくれます。また、市販されている多くのトイレットペーパーは、日本産業規格において水への溶けやすさが厳格に定められているため、水に浸かっている限り、必ず分解のプロセスが進みます。一方で、放置してはいけないケースも明確です。それは、固形物を落としたことが明らかな場合です。プラスチック製のキャップ、おもちゃ、あるいは本来流してはいけない厚手のウェットティッシュなどは、どれだけ時間を置いても水で分解されることはありません。これらを放置すると、むしろ重力で配管のより深い場所、あるいは曲がり角のきつい場所に移動してしまい、便器を床から取り外して作業しなければならないような大掛かりな修理が必要になるリスクを高めます。したがって、放置という選択肢を採る前には、必ず心当たりを整理してください。もし水溶性のものが原因であると確信できるなら、水位が少しずつでも下がっているかを確認しながら待つのが賢明です。このとき、水位が全く変わらない、あるいは数時間経っても数ミリも動かないという場合は、配管が完全に密閉された状態で詰まっている可能性が高く、自然解消は難しいと判断すべきです。また、放置中にはバケツ一杯程度のぬるま湯を、少し高い位置から細く注ぎ入れるのも一つのテクニックです。お湯の熱は紙の繊維をほぐすのを助け、落差によるわずかな振動が詰まりのきっかけを壊してくれることがあります。ただし、熱湯は陶器にひびを入れる原因になるため、四十度から五十度程度に留めることが鉄則です。トイレの詰まりは生活の根幹を揺るがす問題ですが、時間の力を味方につけることで、余計なコストをかけずに解決できる道があることを、ぜひ知っておいていただきたいと思います。