トイレタンクからの水漏れが床を濡らす仕組み
トイレの床が濡れている原因を探ると、意外にも便器の根元ではなく、トイレタンク自体に問題があるケースが少なくありません。陶器でできたタンクにヒビでも入らない限り、タンクそのものから水が漏れることは稀ですが、タンクにはいくつかの部品が取り付けられており、それらの接合部にあるパッキンの劣化が床への水漏れを引き起こすのです。代表的な原因箇所は二つあります。一つは、便器とタンクを固定している「密結ボルト」です。タンクの底には、便器に固定するための二本のボルトが通っており、その内側と外側にはそれぞれゴム製のパッキンが取り付けられています。このパッキンが長年の使用で劣化して硬くなったり、ひび割れたりすると、その隙間からタンク内の水がじわじわと漏れ出してきます。漏れた水は、ボルトを伝ってタンクの底から便器の外面を流れ落ち、最終的に床に水たまりを作ります。もう一つの原因箇所は、タンクと便器の間にあり、水を流す際の通り道となる大きな穴を塞いでいる「密結パッキン」です。これもゴム製の部品で、劣化すると弾力性を失い、タンクと便器の間に隙間ができてしまいます。この場合、レバーを引いて水を流した際に、その隙間から水が勢いよく、あるいはじわじわと溢れ出し、床を濡らすことになります。普段は漏れていなくても、水を流した時だけ床が濡れるという場合は、この密結パッキンの劣化を疑うべきでしょう。これらのパッキンは消耗品であり、設置から十年以上経過しているトイレでは、いつ不具合が起きても不思議ではありません。タンクの側面や裏側を水が伝った跡がないか、水を流した時にだけ漏れてこないか、といった点を注意深く観察することが、原因を特定する手がかりとなります。