トイレのトラブルの中で最も恐ろしいのは、激しい噴水のような水漏れではなく、便器と床の間から「わずかに」漏れ続ける微量な浸食です。このような漏水は、日々の生活の中で見過ごされやすく、気づいたときには手遅れになっているケースが多々あります。なぜこれほどまでに危険視されるのかというと、日本の木造住宅の構造に理由があります。トイレの床下には重要な構造材である根太や大引があり、その上を合板と床材が覆っています。便器と床の隙間から漏れ出した水は、重力に従ってこの床材の合わせ目から内部へと浸入します。常に湿った状態に置かれた木材は、腐朽菌の繁殖によって急速に強度を失い、スカスカのスポンジのような状態になってしまいます。すると、百キロ近い重量がある便器と、その上に座る人間の重さを支えきれなくなり、ある日突然、便器が傾いたり床が抜け落ちたりするという大事故に繋がるのです。また、湿った木材はシロアリの大好物です。トイレの床下から始まったシロアリ被害が、やがて柱を伝って家全体に広がり、資産価値をゼロにしてしまった事例を私は何度も見てきました。便器と床の間が濡れているのを発見した際、多くの人が「とりあえずタオルで拭いて様子を見る」という選択をしますが、これは病気の症状があるのに鎮痛剤だけで誤魔化しているのと同じです。表面を拭いても、床下に回った水分が乾燥することはありません。特に、マンションなどの集合住宅であれば、階下への漏水被害という対人トラブルに発展し、多額の賠償責任を問われる可能性もあります。床に滲む水滴は、単なる掃除の手間を増やす存在ではなく、建物の構造を脅かす凶器であるという認識を持つべきです。違和感を覚えたその日に、信頼できる専門家に連絡を入れる決断力が、あなたの大切な資産と家族の安全を守る唯一の手段となるのです。無理に自分で分解しようとして排水管を傷つけたり、便器を割ってしまったりすると、被害が拡大し修理費用も跳ね上がってしまいます。特にマンションなどの集合住宅にお住まいの場合は、自分の部屋だけの問題では済みません。床下を通って階下の天井に水が漏れ出せば、多額の賠償責任を問われることになります。